「トクラス(旧ヤマハ)のお風呂は人造大理石がすごいらしい」 「でも、ネットで検索すると『後悔』『掃除が大変』というワードが出てきて不安…」
リフォームや新築で浴室選びに迷っているあなた。その不安は正しいです。 住宅業界に身を置き、数多くの浴室リフォームを見てきた私の結論から申し上げます。
トクラスのお風呂は「誰にでも刺さる万能型」ではなく、良くも悪くも“相性が出るタイプ”です。
つまり、後悔の多くは性能不足ではなく「期待していたラクさ・触感・価格感」とのミスマッチで起きます。
この記事では、私の個人的な見解も織り交ぜトクラスで後悔しやすいポイントと、逆に“ハマる人”の条件を、契約前に判断できる形で整理します。
- トクラスのお風呂で後悔する最大の理由:プロが指摘する「3つの誤算」
- 【比較表】トクラス vs TOTOサザナ vs LIXILリデア(後悔しない選び方)
- それでも私が「トクラス」を推す理由。選ぶべきは「本物」を知る人だけ
- 競合他社とは「モノ」が違う。人造大理石の決定的な差
- 「浴室」ではなく「個室」を作るという設計思想
- 経済的・精神的に余裕がある人にとっての「最適解」
- トクラスで絶対に失敗しないための「最終確認」と、プロが定義するベストマッチ
- 1. ショールームで見るべきは「機能」ではなく「掃除の死角」
- 2. 【サッシ屋の助言】最高のお風呂には「窓の断熱」が不可欠
- まとめ:あなたはトクラスを選ぶべきか?最終ジャッジ
トクラスのお風呂で後悔する最大の理由:プロが指摘する「3つの誤算」

(出典:トクラス公式サイト)
多くの人がトクラスのお風呂を導入してから「こんなはずじゃなかった」と後悔する原因は、実は機能そのものではなく、「購入前のイメージ」と「実際の使用感」のギャップにあります。
特に多い「誤算」は以下の3つです。ここを理解せずに契約してしまうことが、後悔の始まりです。
1. 「人造大理石=掃除がいらない」という致命的な勘違い
トクラスの強みは、人造大理石バスタブ(例:スターク/エクラン系)の質感です。
メーカーは「汚れが染み込みにくい」「簡単なお手入れでキレイが続く」といった方向で説明していますが、それを「掃除をしなくても汚れない」と脳内変換していませんか?
これが一つ目の大きな落とし穴です。
放置すれば普通に汚れます
人造大理石は確かに素材の密度が高く、汚れが入り込みにくい優秀な素材です。しかし、あくまで「素材」の話です。 日々の石鹸カス、皮脂汚れ、水道水に含まれるミネラル分(水垢)は、どんな高級な浴槽にも付着します。これを放置すれば、いくらトクラスといえども頑固な汚れとなり、「白い浴槽がなんだか薄汚れてきた」「ザラザラする」という事態を招きます。
FRP浴槽との違い
一般的なFRP(繊維強化プラスチック)浴槽であれば、多少の汚れは「まあ安いしこんなものか」と諦めがつきます。しかし、トクラスを選ぶ方は「美しさ」にお金を払っているため、少しの汚れでも精神的なダメージ(後悔)が大きくなる傾向があります。
「魔法のように掃除がいらなくなる」のではなく、「手をかければ新品同様の輝きが半永久的に続く」のがトクラスです。この「手をかける」プロセスを面倒だと感じる人には、ただの「高くて重い浴槽」になってしまいます。
2. 「床」の硬さと冷たさへの違和感
トクラスのお風呂を選んで後悔したという声で意外と多いのが、「床の感触」です。
競合であるTOTOの「サザナ」などが採用している「ほっカラリ床」は、畳のような柔らかさと断熱性が売りです。今の日本の住宅では、この「柔らかい床」がスタンダードになりつつあります。
一方、トクラスの床はどうでしょうか。 基本的に「硬い」です。しっかりとした剛性感があります。
膝をつくと痛い?
特に小さなお子様がいるご家庭や、介護を想定している場合、床に膝をついて体を洗うシーンがあります。この時、TOTOに慣れていると「トクラスの床は硬くて膝が痛い」と感じることがあります。
もちろん、トクラスの床も水はけが良く、滑りにくい加工がされていますし、カビが生えにくいというメリットがあります。しかし、「浴室に入った瞬間のふんわりとした優しさ」を求めていると、そのストイックな作りに対して「失敗したかも…」と感じてしまうのです。
3. オプションを盛りすぎて予算オーバー&使わない悲劇
トクラスは元が楽器メーカー(ヤマハ)であるため、音響や照明などの「演出機能」が非常に充実しています。ショールームで体験すると、まるで高級ホテルのような気分になり、ついつい以下のオプションを追加したくなります。
- 浴室オーディオ(サウンドシャワーは標準でも高性能ですが、さらに上のグレードなど)
- 調光調色システム
- ジェットバス・ミストサウナ
しかし、冷静になってください。 その機能、週に何回使いますか?
導入後のリアル
「最初の1ヶ月は毎日使ったけど、今はスイッチを入れるのが面倒でただの飾りになっている」 サッシ屋として多くのお客様を見てきましたが、これが大半のリアルです。
特にジェットバスなどの循環系設備は、配管内部の洗浄メンテナンスを怠ると、湯垢や雑菌の温床になります。「掃除の手間が増えるだけの高額オプション」になり下がるリスクがあるのです。
一般的なユニットバスよりも基本性能が高いトクラスだからこそ、さらにオプションを追加すると総額はかなりの金額になります。「なんとなく良さそう」で追加した機能が、結果的に「高かった割に使わない=コスパが悪い」という後悔に直結します。
【比較表】トクラス vs TOTOサザナ vs LIXILリデア(後悔しない選び方)
「どれが正解?」は人によって違います。ここでは“後悔が起きやすいズレ”が出ないよう、特徴を短く整理します(※各社とも仕様・グレードで変動します。最終判断はショールーム体験と見積仕様表で)。
| 比較ポイント | トクラス(every/AXIY/VITARなど) | TOTO(サザナ) | LIXIL(リデア) |
|---|---|---|---|
| 向いている人 | 質感・入浴体験を重視。手入れで美観を育てたい | 掃除のラクさと快適性のバランス重視 | 選択肢の幅(タイプ・機能)とコスパを両立したい |
| 浴槽(素材・思想) | 人造大理石+表面保護の説明あり(例:AXIYは厚さ約9mm+ゲルコート) 公式 | 「魔法びん浴槽」など保温を強く訴求 公式 | 「ミナモ浴槽」など開放感・姿勢のとりやすさを訴求 公式 |
| 床(体感) | “やわらぐフロア”などクッション性の選択肢(仕様で体感差) 公式 | “ほっカラリ床”でやわらかさ・親水性を訴求 公式 | “キレイサーモフロア”で汚れにくさ・お手入れ性を訴求 公式 |
| 掃除の考え方 | 「手入れ前提で、長く美観を守る」方向に合う人向け | 床など「汚れを落としやすい」方向の訴求が強い | 床など「汚れが付きにくく落としやすい」訴求が強い |
| 演出(音・くつろぎ) | サウンドシャワー等、演出要素が選択可能(標準/選択は要確認) 公式 | 快適性・基本性能の磨き込み(シリーズ内で上位提案も豊富) 公式 | ライフスタイル別提案(タイプが複数) 公式 |
| 後悔しやすいパターン | 「掃除が最優先」なのに質感へ投資してしまう/床体感を確認せず契約 | 「質感こだわり最優先」なのに標準グレードで期待しすぎる | 選択肢が多く、オプションを盛りすぎて予算超過 |
| 契約前の最重要チェック | 床体感(素足)・浴槽のまたぎ・掃除の死角・仕様表で標準/選択確認 | 床体感(素足)・掃除動線・見積で「標準範囲」を明確化 | 必要機能の優先順位を先に決め、盛りすぎ防止 |
それでも私が「トクラス」を推す理由。選ぶべきは「本物」を知る人だけ

冒頭では厳しいことばかり言いましたが、誤解しないでください。 私はサッシ屋として、そして一人の住宅のプロとして、トクラスのお風呂が大好きです。
なぜなら、トクラスは「工業製品」というよりも「工芸品」に近い魂で作られているからです。
もしあなたが、初期費用や少しの手間を惜しまず、「10年後、20年後も美しいままであること」に価値を感じるなら、トクラス以上の選択肢はありません。その理由を技術的な側面から解説します。
競合他社とは「モノ」が違う。人造大理石の決定的な差
「人造大理石なんて、どこのメーカーも出しているでしょう?」 そう思っているなら、大きな間違いです。
TOTO、LIXIL、Panasonicなど、大手メーカーも「人造大理石浴槽」をラインナップしていますが、トクラス)とは構造そのものが違います。
1. 「コーティング」か「無垢(むく)」か
多くのメーカーの人造大理石浴槽は、FRP(プラスチック)の基材の上に、人造大理石の層を薄く塗装・コーティングしているものが一般的です。 これはコストを抑えられますが、もし深い傷がつくと、下地のFRPが出てきてしまいます。また、経年劣化でコーティングが剥がれれば、寿命を迎えます。
対してトクラスの浴槽は、厚みのある人造大理石と表面保護(ゲルコート等)を組み合わせた設計で、美観や清掃性を長く保つ方向に振っています。
つまり「放置で無敵」ではなく、「正しい手入れを続けるほど差が出る」タイプです。
これが何を意味するか、プロの視点で解説します。
細かな傷やくすみが出ても、状態によっては手入れで目立ちにくくできる。これがトクラスの大きなメリットです。
一般的な浴槽も補修はできますが、仕上がりや手間はケースバイケースで「簡単に元通り」とはいかないことも多い。だからこそ、日常で付くレベルの擦れやくすみを自分の手入れで“整えられる余地”があるのは強いです。
ただし勘違いしてほしくないのは、何でもゴシゴシやればいいわけではない、という点。まずは中性洗剤と柔らかいスポンジなど、メーカーが想定する基本ケアを軸にし、研磨が必要な場合も推奨方法の範囲で段階的に行うのが安全です。
また、強い研磨や高温物を直接当てるような使い方は、素材を傷めたりツヤ感を変えたりする可能性があるため避けるべきです。長くきれいに使うコツは「乱暴に削る」ではなく、「正しいケアを積み上げて美観を維持する」ことにあります。
要するに、トクラスの価値は“放置で無敵”ではなく、“手をかければ応えてくれる”ところにあります。
つまり、先程「掃除が大変」と言いましたが、裏を返せば「手を加えれば、何年経っても良い状態をキープできる」浴槽なのです。これを「面倒」と捉えるか、「一生モノの革靴を手入れする喜び」と捉えるかが、後悔する・しないの分かれ道です。
2. 「滑らかさ」の次元が違う
ショールームに行ったら、ぜひ浴槽の中に手を入れて、肌で触れてみてください。 他社の浴槽が「ツルツル(プラスチック的な滑らかさ)」だとすれば、トクラスは「しっとり(吸い付くような滑らかさ)」です。
この肌触りは、入浴時のリラックス感に直結します。 「お風呂なんてお湯が溜まればいい」という人には伝わりませんが、「一日の疲れを癒やす質」にこだわる人には、この触感だけで選ぶ価値があります。
「浴室」ではなく「個室」を作るという設計思想
トクラス(旧ヤマハ)は、ご存知の通り楽器メーカーのヤマハがルーツです。そのため、お風呂を単なる「体を洗う衛生設備」としてではなく、「リビングの延長にあるくつろぎの空間」として設計しています。
その思想が色濃く出ているのが、以下の2点です。
1. 標準装備で「サウンドシャワー」がついてくる衝撃
多くのメーカーでは、浴室オーディオは高額なオプション(施工費込みで10万円〜など)です。しかし、トクラスの主力シリーズ(YUNOなど)では、「サウンドシャワー」がグレードにより標準装備されています。
しかも、その音質が良い。 お風呂場は音が反響しやすく、普通のスピーカーでは音がワンワンと響いて聞き取りにくいのですが、ヤマハの音響技術で低音をしっかり響かせ、クリアに聞こえるようチューニングされています。
手持ちのスマートフォンをBluetoothやケーブルで繋ぐだけで、好きな音楽やPodcast、Audibleを聞きながら半身浴をする。 この「体験」が追加費用なしで手に入るのは、他社にはない圧倒的なアドバンテージです。
2. 人間工学に基づいた「バスタブの形状」
トクラスの浴槽は、デザインが独特です。 四角いお風呂の中に、ひょうたん型のような曲線を描く「エルゴデザイン」などが採用されています。
これは奇をてらっているのではなく、
- 湯船の中で腕を置く位置
- 足を伸ばした時の自然な角度
- 半身浴をするためのベンチ
これらを計算し尽くした結果の形です。 「肩まで浸かれればいい」という単純な発想ではなく、「いかに楽な姿勢で長く入っていられるか」を追求しています。
経済的・精神的に余裕がある人にとっての「最適解」
ここまで読んでいただければ、私がなぜ冒頭で「経済的に余裕がある人が選ぶべき」と言ったか、お分かりいただけると思います。
トクラスのお風呂は、以下のようなサイクルで価値を発揮します。
- 初期投資: 他社の量産グレードよりは高くなる傾向がある。
- 維持: 汚れたら磨くという「手間」をかける必要がある。
- リターン: その代わり、15年、20年経っても劣化を感じさせない美しさと、毎日の極上の入浴体験が得られる。
「安くて、手間がかからなくて、そこそこのもの」 を求めるなら、トクラスは絶対にやめておきましょう。そういう方は、LIXILのアライズ(現リデア)やTOTOのサザナを選んだほうが、幸せになれます。
しかし、 「せっかくリフォームするなら、愛着を持って長く使える『良いもの』が欲しい」 そう考えるあなたにとって、トクラスは期待を裏切らない、最高のパートナーになるはずです。
トクラスで絶対に失敗しないための「最終確認」と、プロが定義するベストマッチ
ここまで読んで「やっぱりトクラスがいい!」と思ったあなた。その決断を正解にするために、契約前に必ず行ってほしい「最終確認プロセス」があります。
カタログの写真は一番きれいに見えるように撮られています。現場を知るプロとして、ショールームで「見るべき場所」を具体的にお伝えします。
1. ショールームで見るべきは「機能」ではなく「掃除の死角」
ショールームに行くと、どうしても豪華な照明や浴槽の広さに目が行きがちですが、長く使う上で重要なのはそこではありません。以下の3点を必ずチェックしてください。
①カウンターの「裏側」と「脱着」
トクラスのデザイン性の高いカウンターは魅力的ですが、「裏側」に手が届くか、掃除がしやすいかを確認してください。 デザイン重視で固定されているタイプの場合、裏側にカビが生えやすく、掃除が困難なケースがあります。最近は「カウンターをあえて付けない」という選択をする施主様も増えています。本当に必要か、外せる仕様かを確認しましょう。
②排水口の形状
日々の掃除で一番触る場所です。 髪の毛が捨てやすい構造になっているか、ヌメリが溜まりやすい溝がないか。トクラスの「カミトリ名人」などの機能が、自分の掃除スタイルに合っているか実機で触って確認してください。
③浴槽の「またぎ」と床の「硬さ」
パート1でお話しした「床の硬さ」を、靴下を脱いで素足で体験してください。 また、浴槽のフチの厚みや高さ(またぎやすさ)も重要です。トクラスの浴槽は厚みがあるため、小柄な方や高齢の方は「少し入りにくい」と感じる場合があります。これもカタログの数値では分からない感覚値です。
2. 【サッシ屋の助言】最高のお風呂には「窓の断熱」が不可欠
ここだけ少し、私の本職である「窓」の話をさせてください。 トクラスの高断熱浴槽は非常に優秀で、お湯が冷めにくい構造になっています。
しかし、浴室に「昔ながらの寒い窓(単板ガラス)」が付いていたら、どうなるでしょうか? せっかくの魔法瓶のような浴槽も、窓から冷気が降りてきて(コールドドラフト)、浴室全体の温度を下げてしまいます。これでは、トクラスが目指す「リビングのような暖かさ」は実現できません。
もし予算に余裕があれば、お風呂のリフォームでは「内窓(二重窓)」の設置を強くおすすめします。 トクラスという最高級の浴槽を入れるなら、その性能を100%発揮できる「魔法瓶のような空間(断熱された浴室)」を用意してあげるのが、最も賢い投資です。
まとめ:あなたはトクラスを選ぶべきか?最終ジャッジ
最後に、この記事の総括として、あなたがトクラスのお風呂を選ぶべきかどうかの「ベストマッチ診断」を行います。
ここで「違うな」と思ったら、勇気を持って他メーカーを選んでください。それが「後悔しない」ための最善策です。
❌ トクラスを選んではいけない人(後悔する可能性大)
以下の項目に当てはまる方は、TOTOやLIXILの汎用グレードをおすすめします。
- 「お風呂掃除はとにかく楽が一番。こすり洗いなんてしたくない」という方
- トクラスの人造大理石は、手をかけてこそ輝く素材です。放置派には不向きです。
- 「お風呂は体を洗って温まるだけで十分」という機能重視・コスパ重視の方
- トクラスの価格設定は、その「質感」に対して支払うものです。機能だけで見れば割高に感じるでしょう。
- 床の柔らかさや、膝をついた時の優しさを最優先したい方
- 硬質な素材感が合わない可能性があります。
⭕ トクラスが「ベストマッチ」する人(最高の満足が得られる人)
以下の項目に当てはまるなら、迷わずトクラスを選んでください。あなたにとって、これ以上の選択肢はありません。
- 経済的にある程度の余裕があり、「本物」や「質感」にお金を払いたい方
- プラスチックのような安っぽい光沢ではなく、深みのある艶を求めている方。
- 革靴や愛車の手入れをするように、道具をメンテナンスすることに愛着を感じる方
- 「汚れたら磨けばいい。磨けば新品になる」という一生モノの考え方に共感できる方。
- お風呂を「家の中で一番リラックスできる個室」にしたい方
- 標準装備のサウンドシャワーで好きな音楽を聴きながら、肌触りの良いバスタブで1日の疲れをリセットする。そんな時間を大切にしたい方。
トクラスのお風呂は、オーナーの「美意識」が試されるお風呂です。 手間を惜しまず、この美しい空間を維持できるあなたになら、トクラスは極上のバスタイムを約束してくれるはずです。
あなたのリフォームが、後悔のない最高のものになることを願っています。










