この記事では樹脂サッシについてのメリット・デメリットや、後悔しない樹脂サッシの選び方をお伝えしています。本文中、樹脂サッシについてネガティブな内容も含まれますが、サッシメーカーは日々改善を重ね優れた樹脂サッシを開発しています。その結果、アルミサッシと比較しても
その一例として以下の促進耐候試験データをご確認下さい。
新築当初から10年相当の光の照射や水の噴きかけさらには紫外線の放射でも然程変化がみられません。もちろん、自然環境と全く同一ではありませんので、リスクと捉えるべきデメリットは本文中でしっかり説明していきたいと思いますが、樹脂サッシの品質が向上している点は事前にご確認下さいね。
出典:YKKap
樹脂サッシとは?
樹脂サッシとは、窓のフレームに塩化ビニル樹脂を使用した窓のことです。家を建てる際やリフォームする際に、窓にどんな素材を使用するのかはお部屋の環境に影響しますので非常に重要です。アルミサッシや木製サッシといった他の素材と比較して、樹脂サッシには断熱性や気密性に優れた特徴があります。
また、腐食や劣化に強く、維持管理が容易な点も魅力です。樹脂サッシは住宅のデザインや性能を向上させ、快適な室内環境を実現するための重要なポイントとなります。価格についても、アルミサッシと比較すると高価ではありますが、長期間の利用を考慮するとコストパフォーマンスも良いとされています。一方で、紫外線に弱いなどのデメリットもありますが世界的には普及が進んでおり日本は樹脂サッシの普及がこれからだと考えられています。
出典:YKKap
以下に、メリット・デメリットについて深く解説しています。
樹脂サッシのメリット
まずは、樹脂サッシの主なメリットをリストアップします。
- 優れた断熱性
- 高い気密性
- 防音性
- 腐食や錆に強い
- 結露が生じにくい
- メンテンナンスが容易
- デザイン性に優れる
この様な内容です。順番にみていきましょう。
優れた断熱性
樹脂サッシやアルミサッシなどの窓枠の断熱性能を評価する際には、主に「W/m・K(熱伝導率)」と「U値(熱貫流率)」、「Uw値(窓全体の熱貫流率)」が用いられます。
- W/m・K(熱伝導率): これは材料単体の熱伝導性能を示す指標で、数値が低いほど熱を伝えにくい(断熱性が高い)ことを意味します。例えば、樹脂の熱伝導率は一般的にアルミニウムよりも低く、より断熱性に優れています。
- U値(熱貫流率): これは窓枠や壁などの建築部材全体の断熱性能を示す指標で、数値が低いほど断熱性に優れています。樹脂サッシのU値はアルミサッシよりも通常低く設定されており、断熱性が高いことを示しています。
- Uw値(窓全体の熱貫流率): これは窓枠とガラスの組み合わせ全体の断熱性能を示す値で、窓枠のU値だけでなく、ガラスの種類(例えば二重ガラスや三重ガラス)によっても変化します。
具体的な数値例として、標準的な樹脂サッシのU値は約1.3 W/m²K、アルミサッシの場合は約3.0 W/m²K程度になることが多いです。また、樹脂サッシと高性能なガラスを組み合わせた窓のUw値は、約1.0 W/m²K以下になることがあります。
これらの数値は、樹脂サッシがアルミサッシに比べて優れた断熱性能を持つことを示しています。ただし、これらの値はあくまでも一般的な例であり、使用される材料や製品の設計によって異なりますが、多く普及しているアルミサッシよりも断熱性に優れている事は間違いではないです。
高い気密性と防音性
樹脂サッシは、高い気密性と防音性を兼ね備えています。
気密性とは、空気の漏れやすさのことです。気密性が高いほど、空気の漏れが少なく、室内の温度や湿度を一定に保つことができます。
防音性とは、音が通り抜けにくくする性能のことです。防音性が高いほど、音が室内に入ってくるのを抑えることができます。
- 多層構造:多くの樹脂サッシは、複数の層で構成されています。これらの層は、外部からの空気の侵入を防ぎ、内部の空気が外に漏れるのを効果的に阻止します。この多層構造は、サッシの断熱性と気密性を高める重要な要素です。
- シーリング材の使用:樹脂サッシは、窓枠とガラスの間に高品質のシーリング材を使用しています。これにより、窓全体の気密性が向上し、空気漏れが防止されます。また、時間の経過とともに品質が低下しづらい材料が用いられるため、長期にわたってその効果を保つことができます。
- 継ぎ目の最適化:樹脂サッシの継ぎ目や隅部分は、気密性を保持するために特別に設計されています。これらの部分において空気漏れが起きやすいため、特に注意深い設計と施工が必要です。継ぎ目の最適化により、全体的な気密性が向上します。
この様な構造的な改善を行いアルミサッシよりも高い気密性と防音性を保っています。
腐食や錆に強い
樹脂サッシは、アルミサッシや木製サッシに比べて、腐食や錆に強いというメリットがあります。
樹脂サッシの耐腐食性
樹脂サッシは、主にポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂で作られています。この素材は自然と腐食に強い特性を持っており、水や湿気、塩分による損傷の影響を受けにくいです。従って、樹脂サッシは海岸地域や高湿度地域での使用に最適です。
錆びにくい素材
金属製の窓枠、特にアルミニウムや鉄製のものは、錆の問題が発生しがちです。しかし、樹脂サッシは金属を含まないため、錆による劣化の心配がありません。これにより、メンテナンスの手間とコストが大幅に削減されます。
アルミサッシは実際に錆が発生する事はありませんが、海岸近くでは白い粉をふき腐食する事はあります。樹脂サッシは海岸近くで使ってもその様な反応をする事がないのがメリットといえます。
結露が生じにくい
樹脂サッシは結露の発生を抑える能力に優れており、これは住宅や建物において重要なメリットです。結露は、窓ガラスや枠に水滴が発生する現象で、長期的には窓まわりの額縁や床の木材に腐食やカビの発生を引き起こす可能性があります。
例えばガラスを複層ガラスなどに変更して窓の結露対策をしたとしても、アルミサッシのままだとサッシ部分の結露は解消されません。樹脂サッシは先程も説明したい様に断熱性のが高いため、室内外の温度差を小さくすることができ結露も生じにくくします。
メンテンナンスが容易
樹脂は、金属や木材に比べて、腐食や錆、劣化などの影響を受けにくいという特性があります。そのため、樹脂サッシは、アルミサッシや木製サッシに比べて、メンテナンスの頻度が少なく済みます。樹脂サッシは滑らかな表面なので、汚れが付きにくく、普段の清掃は、柔らかい布やスポンジを使って水拭きするだけで十分です。複雑な洗剤や特別な清掃用具は必要ありません。これにより、日々の手入れが非常に簡単になります。
メンテンスが容易な事は、洗剤などのメンテナンスコスト削減はもちろんですが、手間や時間を省く事ができますので忙しい現代人に適している商品といえます。
デザイン性に優れる
樹脂は、金属や木材に比べて、色や柄をつける加工がしやすいという特性があります。そのため、樹脂サッシは、アルミサッシや木製サッシに比べて、デザインの選択肢が豊富です。
具体的には、樹脂サッシは、以下のようなデザインの選択肢があります。
- 色:白、黒、ブラウン、ベージュ、など
- 形状:シンプルな形状、丸みを帯びた形状、など
デザイン性の高いメリット
デザイン性の高いメリットは、以下の2つが挙げられます。
- 住まいの雰囲気を演出できる
- 住宅価値を高められる
デザイン性の高い樹脂サッシを採用することで、住まいの雰囲気を演出することができます。また、デザイン性の高い樹脂サッシは、住宅価値を高める効果もあります。
樹脂サッシのデメリット
次、樹脂サッシのデメリットについてです。
- アルミよりも価格が高い
- 紫外線に弱く劣化する
- 熱による変形
- 耐久性や強度
この様な内容です。順番にみていきましょう。
アルミよりも価格が高い
樹脂サッシは、アルミサッシに比べて価格が高いと言われています。その理由は、製造コストや素材のコストがアルミに比べて高いことが挙げられます。その断熱性能や耐久性を高めるために、より複雑な製造プロセスと高品質の材料を必要とします。これが、最終的な製品価格に反映される原因です。
樹脂サッシとアルミサッシの価格差は、窓のサイズやメーカー、オプションなどによって異なりますが、一般的に、同じサイズの窓の場合、樹脂サッシは、アルミサッシの約2倍程度の価格になることが多いです。
例えば、1枚あたりのサイズがW1000×H1000mmの窓の場合、アルミサッシの価格は、約10万円程度、樹脂サッシの価格は、約20万円程度が相場です。
また、樹脂サッシの窓を採用すると、住宅の購入費用が数十万円程度高くなる可能性があります。
例えば、住宅の窓が合計で20枚の場合、アルミサッシを採用した場合の費用は、約200万円程度、樹脂サッシを採用した場合の費用は、約400万円程度となります。
このように、樹脂サッシは、アルミサッシに比べて、価格が高いというデメリットがあります。そのため、初期費用を抑えたい方や、ランニングコストを抑えて省エネ効果を高めたい方には、アルミサッシや木製サッシがおすすめです。
より具体的にイメージしやすくなるように、以下のような表を作成しました。
窓のサイズ | アルミサッシの価格 | 樹脂サッシの価格 |
---|---|---|
W1000×H1000mm | 約10万円 | 約20万円 |
W1500×H1500mm | 約15万円 | 約30万円 |
W2000×H2000mm | 約20万円 | 約40万円 |
この表を見ると、窓のサイズが大きくなるほど、樹脂サッシとアルミサッシの価格差が大きくなることがわかります。また、樹脂サッシの価格は、アルミサッシの価格の約2倍程度であることもわかります。
紫外線に弱く劣化する
樹脂サッシは、紫外線に弱く劣化しやすいと言われています。特に日本の気候では、紫外線が強い夏に劣化が進みやすいです。ただし、冒頭でも説明した様に、最近の樹脂サッシは、耐久性が向上し、紫外線に対する耐性も改善されています。これはメーカーが技術開発を進め、より品質の良い製品が登場しているためです。
ただ、樹脂サッシを採用する際は以下の劣化の可能性について留意する事をおすすめします。
- 色褪せ:長期間の紫外線曝露は、樹脂サッシの色を褪せさせる原因となります。
- 亀裂や割れ:紫外線によって材料が脆くなり、亀裂や割れが生じやすくなります。
- 機能的な劣化:紫外線による材料の変質は、窓枠の密閉性や断熱性能にも影響を与える可能性があります。
熱による変形
樹脂サッシは主にポリ塩化ビニル(PVC)など合成樹脂で作られています。これらの材料は一定の温度範囲内では優れた性能を発揮しますが、高温にさらされると軟化しやすく、形状が変形する可能性があります。特に直射日光に長時間さらされると、熱による影響で変形する事も起こり得ます。
耐久性や強度
樹脂サッシのデメリットとして、その耐久性や強度に関する問題があります。樹脂はアルミや金属に比べて硬度や強度が劣るため、風雨や雪などの自然環境の影響を受けやすく、劣化しやすいです。この強度の低下は、樹脂の熱膨張率が原因で、温度の変化による膨張と収縮の繰り返しが樹脂サッシの変形や強度の低下を引き起こします。これにより枠やレールの歪み、開閉不良といった具体的な症状が現れ、窓の使用に支障を来たすことがあります。
樹脂サッシとアルミサッシの比較
樹脂サッシとアルミサッシの違いを比較すると、樹脂サッシは断熱性や気密性に優れ、結露の発生を抑えることができます。一方、アルミサッシは強度や軽量性が優れており、耐久性が高いというメリットがあります。また、アルミサッシは価格面でリーズナブルであるため、以前がリフォームや新築にもよく採用されていましたが、2023年時点では断熱性の観点から樹脂サッシの方がメジャーになっています。
それぞれのデメリットとしては、樹脂サッシは上述したような価格面や高温による変形や色褪せ、耐久性が懸念裁量です。一方、アルミサッシは断熱性が劣るため、冬場の室内温度が低下しやすいというデメリットがあります。
樹脂サッシと樹脂複合サッシの比較
樹脂サッシと樹脂複合サッシの違いを比較すると、主な違いは素材の構成とそれに伴う性能の違いにあります。樹脂サッシは主に塩化ビニル樹脂(PVC)などの樹脂素材で作られており、優れた断熱性や気密性を持ちますが、硬度や耐久性ではアルミニウムなどの金属素材に劣る面があります。一方、樹脂複合サッシは、アルミニウムと樹脂の両方の素材を組み合わせて作られており、樹脂の断熱性能とアルミニウムの強度・耐久性を兼ね備えています。このため、樹脂複合サッシは樹脂サッシに比べて、より高い耐久性を持ちながらも断熱性能を維持しています。しかし、その結果、樹脂複合サッシは樹脂サッシよりコストが高くなります。また樹脂複合サッシは重量があるため使用する人によっては(お年寄りや、体の不自由な方など)の使用には不便さを感じる可能性があります。特に窓の開閉が頻繁に必要な場所や、操作のしやすさを重視する環境では、より軽量で使い勝手の良い樹脂サッシや他の軽量素材を選択することが望ましいでしょう。
まとめ
いかがでしたか?後悔しない為の樹脂サッシのメリット・デメリットについて解説しました。また、アルミ製や樹脂複合サッシとの比較についても参考にして頂き、新築やリフォームの窓選びにお役立て下さい。