新築の打ち合わせで、必ずと言っていいほど話題になるのが「窓のサッシ、どっちにするか問題」です。
ネットで調べると「これからの家はオール樹脂サッシ一択! アルミなんて論外!」という意見が圧倒的です。
一方で、ハウスメーカーや工務店の営業担当からは「九州のような地域なら、アルミ樹脂複合サッシで十分ですよ。デザインもかっこいいですし」と提案されることも多いはずです。
「性能の樹脂」か、「デザインと強度の複合」か。
正直なところ、どちらも正解であり、どちらにも弱点があります。
この記事では、福岡でサッシ屋を営む私が、カタログスペックだけでは見えてこない「オール樹脂窓」と「アルミ樹脂複合窓」のリアルな違いを、プロの視点で公平に比較・解説します。
前提:昔ながらの「アルミサッシ」はもう使えません

本題に入る前に、一つだけ知っておいてください。 2025年4月から「省エネ基準への適合」が義務化されたため、昔のような「アルミサッシ+単板ガラス」の家は、法律上建てられなくなりました。
今の新築住宅の窓は、最低でも「アルミ樹脂複合サッシ」か「オール樹脂サッシ」のどちらかになります。 つまり、比較すべきは「アルミ vs 樹脂」ではなく、現代の標準である「高断熱窓」の2強対決(複合 vs 樹脂)なのです。
①「オール樹脂窓」の特徴:断熱性の絶対王者
どんな窓?
窓のフレーム(枠)が、外側も部屋側もすべて「樹脂(プラスチック)」でできている窓です。
代表的な製品:YKK AP「APW330」、LIXIL「EW」など。
メリット:圧倒的な「結露しにくさ」
樹脂は、アルミに比べて熱の伝わりやすさが約1000分の1と言われています。
フライパンの取っ手が熱くならないのと同じ理屈で、外が氷点下でも、部屋側のサッシ枠は冷たくなりません。
そのため、カビやダニの原因となる「結露」のリスクが極めて低く、家の寿命と家族の健康を守るには最強の選択肢です。
デメリット:フレームが太く、少し野暮ったい?
強度を確保するために、どうしてもフレームが厚く、太くなりがちです。
ガラス面が少し小さくなるため、デザインにこだわる建築家の中には「野暮ったい」と敬遠する人もいます。
また、樹脂は紫外線に弱いため、長期間(30年以上)の使用で変色や劣化が起きないよう、特殊なコーティングが施されていますが、金属のアルミに比べれば素材としての耐久性は劣ります。
②「アルミ樹脂複合窓」の特徴:デザインと強度のハイブリッド

どんな窓?
室外側は耐久性の高い「アルミ」、室内側は断熱性の高い「樹脂」を組み合わせたハイブリッド窓です。
代表的な製品:LIXIL「サーモスⅡ-H / TW」、YKK AP「エピソードⅡ」など。
メリット:窓が大きく見え、スタイリッシュ
外側に強度の高いアルミを使っているため、フレームを極限まで細く(スリム化)できます。
LIXILの「サーモス」シリーズなどは、まるで枠がないかのような見た目で、リビングの大開口窓に使えば景色が綺麗に切り取れます。
また、台風などの強風に対する耐久性も高く、高層階や風の強い地域ではこちらが選ばれることが多いです。
デメリット:枠が結露する可能性がある
室内側は樹脂ですが、外側のアルミ部分が冷やされると、その冷気が内部構造を伝わって、条件によっては枠の隅にうっすらと結露が生じることがあります。
断熱性能の数値(U値)だけで見ると、やはりオール樹脂には一歩及びません。
【徹底比較】樹脂 vs 複合、あなたに合うのはどっち?

それぞれの特徴を一覧表にまとめました。
「自分が何を優先したいか」を考えながら見てください。
| 比較項目 | オール樹脂窓(APW330等) | アルミ樹脂複合窓(サーモス等) |
| 断熱性能 | ◎(最強) 魔法瓶のように熱を逃さない。 | ○(優秀) 十分暖かいが、樹脂には劣る。 |
| 結露リスク | ◎(ほぼなし) 枠が冷たくならない。 | △(環境による) 極寒時は枠が結露することも。 |
| デザイン性 | △(太め) 存在感がある。 | ◎(スリム) 枠が細く、ガラス面が広い。 |
| 耐久・強度 | ○(普通) 紫外線対策は必須。 | ◎(強い) アルミなので雨風・日光に強い。 |
| 価格 | 高め (普及により差は縮小中) | コスパ良 (製品グレードによる) |
プロの選び方アドバイス
- 「とにかく冬暖かく、結露掃除をしたくない!」迷わず「オール樹脂窓」を選んでください。光熱費削減効果も高いです。
- 「リビングの窓をかっこよく見せたい!」「台風が心配」「アルミ樹脂複合窓」がおすすめです。特にLIXILのデザイン窓は空間が洗練されます。
ガラスの仕様も忘れずに!「Low-E」と「スペーサー」の秘密
サッシの枠(フレーム)が決まったら、次は中身の「ガラス」です。 実は、窓の面積の約7割はガラスです。ここを適当に選ぶと、せっかくの樹脂サッシも宝の持ち腐れになります。
プロが推奨する「間違いないスペック」は以下の通りです。
1. 「ペアガラス」か「トリプルガラス」か?
- ペアガラス(複層ガラス): ガラス2枚+空気層。現在の新築の標準です。 福岡・九州エリア(省エネ基準6地域)であれば、オール樹脂サッシ+Low-Eペアガラス(アルゴンガス入り)が、性能と価格のバランスが最も良いと思います。
- トリプルガラス(三層ガラス): ガラス3枚+空気層2層。圧倒的な断熱性能です。 予算に余裕があるなら選ぶべきですが、温暖地ではオーバースペック気味になることも。 「絶対に結露させたくない北側の寝室」や「大開口のリビング」など、場所を絞って採用するのも賢い方法です。
2. Low-Eガラスは「遮熱」と「断熱」を使い分けろ
Low-E(ロウ・イー)ガラスとは、特殊な金属膜をコーティングした高断熱ガラスのことです。 これには2つのタイプがあり、方角によって使い分けるのがプロの常識です。
- 遮熱タイプ(遮熱高断熱型): 太陽の熱を「跳ね返す」タイプ。室外側のガラスにコーティングがあります。 西日が入る窓、南以外の窓には必須です。これを採用しないと、夏場にエアコンが効かない「灼熱地獄」になります。
- 断熱タイプ(日射取得型): 太陽の暖かさを「取り込む」タイプ。室内側のガラスにコーティングがあります。 南側のリビング窓などに使います。冬場にポカポカとした日差しを取り込み、暖房費を節約します。
「全部同じガラス」にするのではなく、専門家と相談して「ここは遮熱、南だけは断熱タイプ」と指定しましょう。
3. 地味だけど重要!「樹脂スペーサー」
ガラスとガラスの間にある「スペーサー」という部品をご存知でしょうか? 通常は銀色の「アルミ」が使われていますが、実はここが意外と重要ななポイントです。
アルミは熱を伝えやすいため、外の冷気を室内に引き込み、ガラスの縁(フチ)を冷やしてしまいます。 これが、ガラスの真ん中は平気なのに、隅っこだけ結露している原因です。
見積もりを確認し、可能であれば「樹脂スペーサー」に変更してください。 部屋全体の温度が劇的に変わるわけではありませんが、「窓枠のカビ防止」には大きな効果を発揮します。 メーカーによっては数千円のオプション、あるいは上位モデルなら標準装備されています。
新築に高断熱窓を選ぶ費用対効果は?

「樹脂窓にすると高いんでしょ?」 そう心配される方も多いですが、結論から言うと、「初期投資は絶対に回収できます」。
エアコン1台分くらいの差額で快適さが段違い
例えば、30坪程度の家全体を「アルミ樹脂複合窓」から「オール樹脂窓(APW330など)」にグレードアップした場合、差額はおよそ15万円〜25万円程度と言われています(ハウスメーカーの標準仕様による)。
高いと感じるかもしれませんが、これはエアコン1台〜2台分の値段です。 窓の断熱性が低いと、どんなに高性能なエアコンを買っても効きが悪く、電気代ばかりかかります。 逆に、良い窓を入れれば、6畳用の安いエアコンでもLDK全体が冷えるようになります。 35年ローンで考えれば月々数百円の差。これで「夏涼しく、冬暖かい」が手に入るなら、安いものです。
補助金(子育てエコホーム等)を活用せよ
さらに、国は「高断熱窓」の普及に本気です。 「子育てエコホーム支援事業」などの補助金制度では、窓の性能グレード(ZEHレベルなど)を上げることで、もらえる補助金額が増えるケースがあります。
「樹脂窓にしたら補助金が増えて、実質的な負担額は複合窓と変わらなかった」という事例も多々あります。 必ず最新の補助金情報を工務店に確認しましょう。
まとめ:キッチンをグレードダウンしてでも、窓にお金をかけろ
最後に、サッシ屋としてこれだけは伝えたいことがあります。
「キッチンやお風呂は15年で交換できますが、窓は簡単に変えられません」
カバー工法という方法で簡単に取替える方法もありますが、窓枠から取替えようとすると、外壁を壊し、足場を組む大工事が必要です。 だからこそ、新築の時に「少し良い窓」を入れておくことが、後悔しない家づくりの鉄則なのです。
この記事を参考に新築の窓選びを進めてくださいね。










